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ヤンチャンWebさんの作品:第2回 写ルンです

写ルンです

 知人がコンビニで「切手」を所望したところ、若いアルバイトに通じなかったそうだ。確かに生まれた時から「メール」が存在した世代にとって「紙に字を手書きする」という時点で爆笑ものだろうが、さらにそれを紙の筒に入れ、謎の紙片を貼って人力で運ぶと聞いたらもはやドン引きだろう。コンビニ店員に切手の説明をしたところでその手順があまりにも変態すぎるためカラーボールを投げつけられた後、通報の恐れすらある。

 このように「通信手段」というのはこの数十年で劇的に発達した。そして「記録手段」も同じように進化した。むしろ機能に何の成長も見られないのは人間ぐらいのものである。

 そんなわけで今回のテーマは「写ルンです」だ。現在写真というのは、主にスマホで撮るものであり、スマホの容量が640KBとかでなければ「無限に撮れるもの」というイメージだろう、例え容量がいっぱいになっても消去すればまた撮れる。だから石原さとみに見える自撮りが撮れるまで撮り続けるということも可能なのだ。

 

 

しかし、ほんの平成初期まで写真はそういうものではなかった。当時写真は「データ」ではなく「フィルム」に写すものであり、1本のフィルムにつき12枚から36枚程度しか写せず、一度シャッターを押したら、それを消して取り直しということはできない。

 そしてそのフィルムを写真屋に持っていき「現像」してもらい、やっと「写真」になるのだ。

 つまり撮った画像をその場で確認することもできないので、今撮ったのが石原さとみなのかメスゴリラなのか現像するまでわからないのである。

 つまり、まず本体となるカメラを購入した上、消耗品であるフィルムを買い、さらに現像代を払わなければ写真は手に入らなかったのだ。石原さとみに見えるまで写真を取るより、石原さとみに整形した方が安いレベルである。

そんな写真をもっと手軽に撮れるようにしたのがカメラ本体にフィルムもついて1300円前後の「使い捨てカメラ」の「写ルンです」だ。

 この写ルンですの登場で写真はより身近なものとなり、デジカメが登場するまで活躍していた。ではデジタル撮影が主流となった今、写ルンですは切手と同じくオワコンの通報案件になっているかというと、今でも生産はされており「デジタルよりエモい写真撮れる」といってSNSなどで人気らしい。

 もしかして「エモい」と言ってしまえば、なんでもイケてる風になるのではないか。しかし残念なことに「エモい」と言って説得力が出せるのは若者だけなのだ。

 中年がコンビニのレジ前で「今は切手がエモいんだ」と言っても「老が覚えたての言葉を使っている」としか思われないのだ。

 

📢 【うつるんです】富士フイルムが昭和61年に販売開始したレンズ付きフィルム。販売開始は昭和時代だが、爆発的ヒット商品となり平成13年に世界で1億本以上売り上げ最盛期を迎える。

 

PROFILE

カレー沢薫
どうぶつ社会風刺政治ギャグ漫画『国家の猫ムラヤマ』①②巻、『国家の猫ムラヤマ 解散!』、
健康エッセイ『部屋から出ないで100年生きる健康法』、
SNS心得エッセイ『一億総SNS時代の戦略』(すべて弊社刊)大好評発売中!
弊社エレガンスイブ編集部運営ウェブサイトSouffle(スーフル)にて『
ほがらかSNSライフ 』連載中!

X(旧Twitter)@rosia29
ヤンチャン担当X(旧Twitter)@murayamasoul

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5時間前