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ヤンチャンWebさんの作品:第19回 ヒルズ族

ヒルズ族

 今ネット上では「港区女子」が話題である。港区女子とは港区で華やかな生活を送る女子のことだが、最近「彼女ら自身が港区に住んでいるわけではなく、港区に出没し金持ちからタダ飯やタク代を強奪する存在」として話題になってしまったため、ほぼ「山賊」や「山姥」と同じ文脈で語られるようになってしまった。

 そうだとしたら、妖怪港区女子に触手を刺されて金品を吸われている宿主「金持ち港区おじさん」が必ずいるはずなのだが、そちらの生態に注目が集まることはあまりない。

 だが平成の世には現在の港区おじさん的な人が注目され、流行語にもなったのだ、ヒルズ族である。

 ヒルズ族とは「六本木ヒルズ」に本社を置く企業の代表者、もしくは住んでいる人間のことである。六本木ヒルズの家賃は高く、成功した起業家や芸能人など専ら裕福層が住んでいたため、それらのセレブを「ヒルズ族」と呼んだのだ。

 ちなみに代表的なヒルズ族は、元ライブドアのホリエモンや、楽天のミキティ、元グッドウィル代表など、いろんな意味で早々たるメンツが揃っている。

 六本木ヒルズの家賃がどれだけ高いのか、現在の家賃をネットで調べてみたところ「月額28万円~445万円」だそうだ。月額445万円の部屋がどれほど豪華なのか想像もつかないが、逆に28万円の部屋が10人ぐらい怪死者を出した事故物件という可能性もある。ヒルズ族という言葉は使われなくなってしまったが、六本木ヒルズには未だに金持ちが住んでいるようである。

 私も若いころに六本木ヒルズに行ったことがある。一見私にとって世界一関係ない場所のように思えるが、関係ないからこそ「せっかく東京に来たんだから六本木ヘェルズたらいうとこに行ってみるべ」という蛮勇すぎる理由で何の用もなく六本木に足を踏み入れることができたのだ。行ったところで入口の時点で殴る蹴るの暴行を受けるだけだろと思うかもしれないが、六本木ヒルズ自体はオフィスや居住区だけではなく商業施設もあるため、リュックを背負った田舎者でも入ることは可能だったのだ。

 

 

 そこの最下層で「冷たい石の上でコネて食うアメリカ発のアイス」という、いかにも一瞬流行って消えそうなスイーツを食ったのも今ではいい思い出だ。だが、今思えばあれは本当に六本木ヒルズだったのか。何せ東京に対して土地勘が全くなかったのだ「やっぱヘェルズはでけえズラ」と言いながら「イオンモール六本木」に入ってフードコートでアイスを食って帰っただけの可能性もある。

 確かめに行きたいところだが、私は十年以上経った今でも六本木ヒルズに世界一関係ない生活を送っているので行く用がない。

 

📢 【ひるずぞく】平成15年に開業したビル・六本木ヒルズに本社を置く会社の企業の代表、または六本木ヒルズ内の住宅棟に住む住人のこと。ITベンチャー企業の成功者が集まり〝勝ち組〟の象徴とも言われた。

 

PROFILE

カレー沢薫
どうぶつ社会風刺政治ギャグ漫画『国家の猫ムラヤマ』①②巻、『国家の猫ムラヤマ 解散!』、
健康エッセイ『部屋から出ないで100年生きる健康法』、
SNS心得エッセイ『一億総SNS時代の戦略』(すべて弊社刊)大好評発売中!
弊社エレガンスイブ編集部運営ウェブサイトSouffle(スーフル)にて『
ほがらかSNSライフ 』連載中!

X(旧Twitter)@rosia29
ヤンチャン担当X(旧Twitter)@murayamasoul

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1時間前