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ヤンチャンWebさんの作品:第18回 MK5

MK5

 90年代後半「MK5」という言葉が若者の間で流行した。その前に現在の若者の流行語をネットで調べて見たところ「好ハオ」「ユザネ」「てぇてぇ」「限界オタク」などが流行っているらしいが、果たしてマックで突然「推してぇてぇ」や「ウチら最強限界オタクでマジしんどい」などと言い出すキモいギャルが本当に存在するのだろうか。

 このようにネットで若者言葉を調べたところで「陰キャの間で流行っているネット上以外ではキモくて使ってはいけない言葉」が高確率で混ざっているため、あまり当てにはならないのだ。若者の間で流行っている言葉を本当に知りたければ、外に出て若者に聞くのが一番正確なのだが、もちろんそんなことは若者の防犯上不可能なので、ネットで検索し「最近の若者が使っている言葉って俺たちがネットで使っているキモい言葉と大差ないんだな」という勘違いをしてしまうのだ。

 

 よって「MK5」も当時の若者がリアルに使っていたかは未だに謎だが、私が知っているということは少なくともネットの陰キャの間では広まっていたと思われる。実はこの「MK5」には「マジでキレる5秒前」と「MajiでKoiする5秒前」という二つの意味がある。今すぐ「恋」を「koi」と書くのはやめろ、この際「maji」は見逃してやる、と怒り心頭の方も多いだろう。しかしこれは広末涼子が歌った曲のタイトルであり、それがそのまま流行語になったのだから仕方ないのだ。

 広末涼子と言えば当時のスーパーアイドルであり、男たちはこぞって広末にkoiしたものである。しかし、当時広末に熱狂したボンクラも今ではいい中年だ。koiしそうになっても5秒の間に不倫やセクハラで全てを失う自分を想像してむしろ冷静になってしまうようになった。それに対し広末自身のkoiは四半世紀経ってもとどまることを知らず、先日もいろいろと賑わせたところである。我々世代の青春を象徴するアイドルが今もパワーを失っていないことがわかって私も嬉しい限りだ。

 しかし、「切れる」と「koi」では意味が真逆である。「あいつにMK5だわ」と言われてもどちらの意味か判別つかず、一歩間違えれば傷害やストーカーなどの大事故が起きそうなものだ。だが今思えば当時でも「MK5」を「koi」の意味で使って許されるのは広末だけだったような気もする。

 二つ意味があっても、ほとんどが切れる5秒前に使っていたため、誤解も生じなかったのかもしれない。

 

📢 【えむけーふぁいぶ】平成8年頃からコギャルの間で使われた「マジで切れる5秒前」という意味のスラング。平成9年発売の広末涼子のデビュー曲『MajiでKoiする5秒前』はこの流行語をもじって作られた。

 

PROFILE

カレー沢薫
どうぶつ社会風刺政治ギャグ漫画『国家の猫ムラヤマ』①②巻、『国家の猫ムラヤマ 解散!』、
健康エッセイ『部屋から出ないで100年生きる健康法』、
SNS心得エッセイ『一億総SNS時代の戦略』(すべて弊社刊)大好評発売中!
弊社エレガンスイブ編集部運営ウェブサイトSouffle(スーフル)にて『
ほがらかSNSライフ 』連載中!

X(旧Twitter)@rosia29
ヤンチャン担当X(旧Twitter)@murayamasoul

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1時間前