暴君ハバネロ
昨日テレビで「日本の激辛商品を海外の激辛好き国民に食わせてみる」という企画をやっていた。その中に「獄激辛」と銘打った激辛ペヤングが入っていた。まず「獄」は食い物に使う漢字ではないし、正直地獄と煉獄さん以外では見かけない。
辛いものを常食している国からしてもこのペヤングは「辛すぎる」という感想であり、それを聞いたメーカーは「辛いものに慣れている国の人ならこの商品の良さをわかってくれるかと思っていた」とコメントしていた。どうやら、製作者含め誰もこの商品の良さをわからないまま世に放たれてしまっていたようである。
たまにこのような「誰にも向いてない商品」は発売されてしまうのだが、強いて言うなら「怖いもの見たい勢向け」であり、独創性のないユーチューバーの話題作り用としても一定の需要がある。怖いものの中でも「辛い」は意外とトライしやすい部類であり、少なくともヴィレヴァンが販売した「男性器味のポテトチップス」よりは手が出しやすい。
そしてラインナップの中には20年前激辛食品として一斉を風靡したスナックも入っていた。それが「暴君ハバネロ」である。
ハバネロといえば、今やお馴染みの唐辛子だが、その名を知らしめたのはこのスナック菓子からだと思われる。その後、引き延ばしにあった少年漫画のように「実はもっと辛い奴がいました」と、新しい唐辛子が登場したりもしたが、当時は最強の唐辛子という触れ込みだった。
そこから激辛商品はエスカレートし「獄」のような「食べさせる気がない食べ物」という哲学に突入してしまったが、暴君ハバネロは辛いものが得意でなくてもギリギリ食べられるラインだったため、多くの者が怖いものみたさで試し、ヒットしたのではないかと思う。
私も試しに食べていた人間なので懐かしく思っていたら一緒に見ていた夫が「俺は食べたことがない」と言い出した。あれだけ流行っていたのに何故かと聞いたら「辛そうだから」という当たり前すぎて斬新な答えが返ってきた。
確かに、好奇心が旺盛すぎて実質男性器を食う羽目になっている奴に比べれば、最初から怖いものは見ない人間の方が賢いと言える。そんな堅実なタイプが私と結婚したのも不自然だが、多分私が男性器味だと気づかなかったのだろう。それに比べれば「獄」と書いてくれるペヤングは親切だ。
📢 【ぼうくんはばねろ】平成15年より東ハトが発売しているスナック菓子。かつて世界一辛い唐辛子としてギネス認定されたことのある「ハバネロ」を使用。平成16年にはヒット商品番付にも選ばれ、激辛ブームの火付け役となった。商品名はハバネロとローマ帝国第5代皇帝で暴君として悪名高いネロをかけ合わせている。
PROFILE
カレー沢薫
どうぶつ社会風刺政治ギャグ漫画『国家の猫ムラヤマ』①②巻、『国家の猫ムラヤマ 解散!』、
健康エッセイ『部屋から出ないで100年生きる健康法』、
SNS心得エッセイ『一億総SNS時代の戦略』(すべて弊社刊)大好評発売中!
弊社エレガンスイブ編集部運営ウェブサイトSouffle(スーフル)にて『 ほがらかSNSライフ 』連載中!
X(旧Twitter)@rosia29
ヤンチャン担当X(旧Twitter)@murayamasoul
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