

Jリーグ屈指のCB(センターバック)、FC東京・森重真人選手のJ1リーグ戦通算500試合出場達成を記念して、今回FC東京と『Mr.CB』のコラボが決定!
500試合出場という、とてつもない記録を達成した今、森重真人選手はCBとして何を感じ、考えているのか。
常に記録を更新し続ける森重選手にインタビューしました!

――J1リーグ通算500試合出場、おめでとうございます。史上11人目の記録達成ですが、これくらい長くプレーすることは、若い頃から考えていましたか?
森重
いや、イメージしていなかったですね。節目のような実感もなかったけど、周りからそう言われて、そんなに試合に出ていたんだ、すごい記録なんだなと。
――今日は『Mr.CB』の主題であるCBについて聞きたいのですが、森重選手は自分のことをどんなタイプのCBだと思っていますか?
森重
僕自身はCBっぽくないCBだと思っています。攻撃が好きだし、点を取りたかったので、CBをしながら自分の欲を満たせるプレー、みんなとは違う新しいCB像を作り上げたいなと思っていました。元々はボランチだから、CBになったときに何ができるかを考えて、自分がやりたいプレーをやろうと。
――自分の欲を満たせるプレーとは、具体的にはどんなプレーのことですか?
森重
守備のことよりも、自分でボールを運んで左右に蹴り分けて、後ろから攻撃を組み立てたり。CBは自由にボールを持てるポジションだからこそ、積極的なプレーをしたい。インターセプトしたらそのまま上がっていくとか。普通のCBは、自分のポジションを空けてまで前に行くプレーはやらないけど、僕はすごく楽しいなと思ってプレーしています。
――森重さんはフィードの正確さに加えて、意外なパスを通すイメージがあります。そこはこだわりとか、欲が出るところですか?
森重
そうですね。相手を欺くパスやプレーをしたいと思っているので、自分も楽しいし、見てくれる人にも楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。

――『Mr.CB』の主人公、千明 明は身長は低いけど、空間認識やジャンプ力を生かしてCBをやっていて、攻撃力も高いです。
森重さんも体格で勝負するCBではないと思いますが、彼をどう感じますか?
森重
千明は僕の選手像に似ているなと、すごく思います。僕もCBとして生きていくために、背の高いFWにどうやって勝つか、工夫しながらやってきたので、親近感がわきますね。
――たとえばどんな工夫をしたのか、地上戦と空中戦のそれぞれで教えてもらえますか?
森重
地上戦はボールを奪ったり、身体を当てたりするタイミングですね。大きなFWはCBを背中で抑え込むために、手を使って後ろを確認してきます。逆にそこにCBがいないと、手が空振りして「アレっ?」と戸惑うので、最初はあえて少し離れて、タイミングをずらして奪いに行く。空中戦も同じです。とにかくタイミングをずらす。自分が早くジャンプしたり、跳ぶ前に身体を当てたり、ちょっとした工夫です。重要なポイントは、相手FWが何を好んで、何を嫌がっているか。それを考えながらプレーしています。

人間関係について
――なるほど。『Mr.CB』の主要キャラにはもう一人、若い千明をCBとして育てていく吉永 衛がいますが、森重選手もベテランとして、若手に何かアドバイスなどすることはありますか?
森重
僕はあまり若い選手に教えるとか、手本になるとか、そういう感覚はなくて。それよりも彼らの良さや、僕にないものを持っているから、それを観察して自分のものにしたいとか、そういう視点のほうが多いですね。多少はアドバイスもするけど、僕自身が吸収したいタイプなんです。
――最近の若手で、森重さんが「吸収したい」と思った選手は誰ですか?
森重
他のチームですけど、アルビレックス新潟の稲村(隼翔)選手です。
――おぉ、セルティックFCに移籍が決まりましたね。
森重
そう。左利きで縦パスをどんどん差し込むし、精度が高いし、すごく自分の好きなCBだと思いました。
――なるほど。吉永の場合は千明に飯を食わせたり、送り迎えしたりとプライベートまでお世話していたけど、森重さんはそういうのはないですか?
森重
あまりお世話はしないですね。飯を食わせるのは(GKの)波多野 豪くらいかな(笑)。
――逆に森重さんが若いころに世話になった、吉永みたいな大先輩はいるんですか?
森重
いやー、そういう先輩もあまりいなかったかな。同じポジションで今野(泰幸)選手を近くで見て学んだのはありますけど、特に言葉でのアドバイスはなかったので。
――(笑)。今野さんはそういうタイプじゃないですよね。
森重
そうですね。僕も一人でやるタイプだし、隣で見ていると寄せの勢いがすごく速いので、そういうところを見て学びました。

――森重選手は今、38歳ですよね?
森重
はい。
――今後どういうCBになりたいとか、自分が進む道のようなものは考えていますか?
森重
攻撃でどう違いを見せるのかは、まだまだチャレンジしていきたいですね。歳を重ねるとミスをしちゃいけない気持ちが先行して、若いときほど思い切ったプレーができなくなってきたけど、やっぱり自分はチャレンジしたい。周りが見て「アッ」と驚くようなプレーをしたいと思っています。
――それは…中堅サラリーマンに刺さりそうな良い言葉ですね。次に監督について伺います。『Mr.CB』は楳埜(うめの)監督という個性派の指揮官がいますが、森重さんのキャリアで印象に残っている監督はいますか?
森重
そうですね。ザッケローニ監督、マッシモ・フィッカデンティ監督もそうですが、イタリア人の監督は僕の中で印象的でした。守備のルールや細かさ、守備に対する意識などは勉強になって、「そうなんだ」と思うことがたくさんありました。采配も交代出場した選手が活躍したり、指示した通りに試合が動いたりするのを、自分の中では感じ取っていました。この監督は何を見て、どういう景色に映って、そう代えたのかと気になったし、興味がわくことが多かったですね。
――最近、漫画ではU-22がメインになっていますが、森重選手は年代別代表やユース時代のこと、何か思い出はありますか?
森重
U-20の頃はまだボランチで、五輪ではCBでした。僕は五輪予選には出ず、直前合宿から参加して本大会へ行きましたけど、チームには予選から出ている主力の人たちがいるので、そこに自分がパッと入り、存在を示して生き残らなければいけない。「負けたくない!」と思いながらやったし、同世代には槙野(智章)もいたので、同じCBとして彼が引退するまで、ずっとライバルとして刺激を与え合う関係になっていたと思います。
――ライバルの槙野さんとはバチバチで目を合わせないとか、そういうことはあるんですか?
森重
それはないです。幼馴染というか小学校から一緒なので。
――漫画ではアンダー世代がA、B、Cとランク分けされて部屋も食事も別でしたが、そういう格差を感じることはありましたか?
森重
それとリンクするかはわからないですが、僕は広島でジュニアユースからユースへ昇格できず、高校サッカーへ行ったので、そこでエリートの道を真っすぐ進めなかったのは、自分の中ではターニングポイントでした。広島ユースはすぐ近くにあったし、槙野や柏木 陽介はそこでプレーしていたので、彼らに絶対負けたくないという気持ちでやっていました。
――プロになり、代表にも入って追いついたときは、感慨深さがありましたか?
森重
自分の中では追いついたとか、そういう思いはなくて、自分なりの目標が達成できたら、すぐに新しい目標やライバルになる選手が出てくるので、常にその連続だったかなと思います。
――森重選手といえば、横浜FC戦の終了間際のPKもそうですが、強心臓というか、メンタルが安定している印象がありますが、何か調整法はあるんですか?
森重
特にはないですね。もちろんみんなと同じくらい考えるし、不安にもなるけど、その先に開き直れるところがあるのは、自分の強みかなと思ってます。あとは、これだけトレーニングしたから大丈夫という、絶対的な練習量と質を自信に変えることが、自分の中にあったと思います。

身体のケアについて
――今は年齢的なこともあって、身体ケアにかけている時間が昔より長いと聞きましたが、どのくらいやっているんですか?
森重
もう練習が終わって、寝る直前までです(笑)。
――寝る直前まで!?
森重
大げさに言うと、そのくらいですね。治療やストレッチ、食事や睡眠を含めて、寝る直前まで意識しています。元々ケアはやってるつもりでしたけど、30代前半くらいなら、まだごまかしが効くところはありました。でも数年前からそれでも怪我をしちゃったり、痛いところが出てきたりしたので、もっと本気でケアをやらないといけないと思って、今はそれ以上にやっていますね。
――身体のケアと言えば、近年は暑いですが、この酷暑を乗り切る森重さん流の対策はあるんですか?
森重
いや教えてほしいですよ、逆に(笑)。
――どんどん暑くなりますよね。
森重
水風呂とか僕は嫌いだったんです。もう大嫌いで。
――え? やる人多いですよね?
森重
普通に当たり前にみんなやるんですけど、僕は2~3年前からやっとやり始めて。それまでは「入れ」って言われても「もう入ったよ」って言ってた。
――いや絶対入ってない(笑)。
森重
それくらい嫌だったんですよ。ただ、さすがにこの暑さだし、身体の熱が抜けないから、今は入って熱を取ってます。
――それもケアの一つと。
森重
嫌だけど、これはもうしょうがないですね。
――ノリと勢いの若い頃とは違いますね。
森重
まあでも、今もギラギラしないとなと思う反面、本当に必要なことだけが年齢と共に残っていくような感覚もあるし、そこはバランスですね。省エネすぎても良くないし、CBというポジションを考えても、相手にとって一番ウザい存在じゃないといけないし。そういうことは考えますね。
――なるほど。あとは『Mr.CB』の中で千明は試合に出られない経験をたくさんしながら成長していきますが、森重選手はスタメンから外されたとき、どんなことを考えるんですか?
森重
いや、もう怒りに震えてますよ。
――すごい。そこは38歳だろうが、何歳になっても変わらない?
森重
変わらないですね。やっぱり、そういう悔しい気持ちが込み上げてくることが、また自分の中でパワーになるから。

――では最後の質問です。最近『Mr.CB』では千明を指して「あいつは今を生きてるCBなんだよな」とU-22代表の戸澤監督などが言っています。アナリストから見ると全然良くないんだけど、監督自身は「あいつは気になる。今を生きてるから」と。「今を生きてるCB」という言葉、森重さんはどう解釈しますか?
森重
実は「今を生きてる」という言葉は、僕が日頃から自分自身に問いかけながらやっている言葉で……。だから今、ちょっと鳥肌立ったんですけど。
――マジですか。
森重
趣旨と違っちゃうかもしれないんですけど、過去の成績とか500試合とか、そういうことじゃなくて、常に今。今を誇れる自分でありたい。今を評価してもらえる自分でありたいと思っていたので。僕が思う「今を生きてる」と、彼が言われている言葉は違った意味かもしれないけど、周りに「CBってこういう像だよ」とか「こうしなきゃいけない」と作られる選手ではなく、自分がやりたいプレーだったり、今までにないCB像を作ることだったり、そういう選手が「今を生きてる」んじゃないかと解釈しました。
――なるほど。千明も今までにない、誰の真似でもないCBだし、それが「気になる選手」なのかもしれませんね。面白い解釈でした。今日はありがとうございました!


PROFILE
森重真人
1987年5月21日生まれ。2006シーズンに大分トリニータでプロサッカー選手としてデビュー。2010シーズンにFC東京に移籍し、今年で16シーズン目を迎えた。主にセンターバックとして対人の強さ、冷静な判断、正確な技術を武器に、2025シーズンにJ1リーグ戦通算500試合出場を達成。日本代表としても国際Aマッチ41試合に出場している。

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